映画「この世界の片隅に」はなんでもない日常を美しく描き出した名作アニメ

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「この世界の片隅に」が松本穂香主演でドラマ化、今日から放送だそうだ。

何度も書いてるけど、アニメ作品を見た後にドラマを見るのは正直チープに感じてしまって厳しいのは確かなので、なるべく全く別の作品として見るようにしてみようかなと。

 

今回はドラマ版の方の話ではなく、あくまでもアニメの方、映画「この世界の片隅に」の感想を書いてみようと思うけど、今さら自分なんぞが感想申し上げるなんて恐れ多いほど、

ご存知名作中の名作だ。

 

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「君の名は。」と「この世界の片隅に」

今年、「息子の名前が映画の最後のテロップに載ってるんだよ!」と喜んでる友人の年賀状をもらって、えー!うらやましい!と思ってたw
(クラウドファンディングの方じゃなく、アニメ制作側として)

そんな矢先の3月に日本映画専門チャンネルでオンエアされたので、確認も兼ねて?録画してあらためて視聴。

ああやっぱりなんて素晴らしい作品だろうと再び感動。

友人の息子の名前も発見できて一安心w
あんなチビスケだったのに…と。

 

という訳で、3月の終わりに放送されたこの名作アニメ「この世界の片隅に」を見て書いていたざっくりの「感想文」を今回まとめてみた。

 

まず、同時期に上映された作品として、「君の名は。」の超ヒットは記憶に新しいところ。

君の名は。

 

もちろん新海誠作品は素晴らしくて、恐らくは全て見てると思うし、昔買ったDVDも保管してる。

ただ、どうしても苦手な部分もあって、それはなんというか、ちょっと切なすぎて苦しくなる感じが残る作品も多くて、すっきりと晴れての終わりをあまり感じられない部分にある。

これは多分に自分自身の経験による部分が大きい気がするが…

 

恋愛ものというのが基本あまり好きじゃないんだけど、単純なのでちゃんとくっついて幸せに終わって欲しいと思ってしまうw

もちろん物語として、清々しい別れとか、青春の1ページ的な展開の作品があるのは当然だと思うんだけど、新海作品はちょっとそっち方面が強くて苦手だったりするのである…

 

「君の名は。」はちょっと「雲のむこう、約束の場所」を思い出させて、最後まで心配する部分もあったりしたので、手放しで楽しめなかったというのが、個人的な正直な感想。

雲のむこう、約束の場所

 

一方で、期待はしていなかった、というか、原作も知らなかったし、それ程話題になっているとも知らなかったものの、なんと素晴らしい、と素直に感動した作品がこの「この世界の片隅に」だった。

 

(出典:YouTube 劇場アニメこの世界の片隅に

 

匂いや感触のない戦争

まず何と言ってもこの作品の好きなところは、戦時下の物語なんだけど悲壮感がなくて、なんでもない日常がとても美しく描かれてるところ。

 

もちろん大変な時代ではあったろうし、凄まじい現実も起こりはするんだけど、どこかでそうしたものをさらりとかわして、すずさんや周作さん、家族や地域の人たちの、ただそこにある日常が描かれている。

 

戦争がどれほど愚かかなんて、体験した方はもちろん、自分も含めて体験したことのない人間でも分かること。

ただ、その愚かさを何によって認識するのかというのは、少なからずズレがあるんじゃないかなと思う。

体験した方にしてみれば、目の前で人が死んだり、家が焼かれたり、町が破壊されたり、何より家族が犠牲になったりといった、直接的な悲惨な現実だと思うし、そうした悲惨な体験をした家族の言葉を直接聞いてきた家族にしてみてもまた違うと思う。

小学生が感じること、オッサンが感じること、年齢で受ける印象もまた違うはずだ。

 

ただ、「風化」してる印象が拭えないのは事実な気がする。

 

風化してるかしてないかというのは、テレビや他メディアが取り上げるかどうかとかよりも、それに対してどう感じるかということの方が大きいと思う。

 

いくらリアルな映像で戦争を描いてみても、それに対する感情は戦争への直接的な感情というよりも、映像そのものに対しての評価とか感想とか、そういうものにすり替わってしまうんじゃないだろうか。

戦争経験のない、まして平和真っ只中の日本人にとっては、なんというか、感触がない、臭いがない、イコール現実感のない、あくまでも映像の中の世界になってしまう気がする。皮肉なことに。

 

年齢で受ける印象、という点で見れば、子供が見れば、恐い、悲しい、嫌だ、とかそういう負の感情の強いものが戦争ということになるかもしれないけど、悲しいかな大人になっていくにつれ目にする機会も増えて、ああまたか、とか、ともすればおおかっこいい、とかいったものにさえなってしまう危険性さえある気がする。

 

下らなくも美しい日常

じゃあ一体、そんな汚れっちまったオッサン(オバハン)の心に響くものはなんなんだろうと言えば、それこそがもうしょうもなくて下らない、普通の日常なんじゃないかと思うのだ。

 

自分のような空想、妄想癖のあるような者にとってはなおのこと「下らない日常なんてクソ喰らえだ」と思うことはよくある。(へ?ない?)

でも年齢を重ねるに連れて、ああ夕焼けがきれいだなとか、今年は桜が早いなとか、雨の匂いがするなとか、仕事行きたくないなとか、あいつの顔見たくないなとか、今日は何食べようかなとか、そういう、下らないと嫌悪していた日常に、実は小さな幸せがいっぱい隠れてることに気付いてくる。

 

というか、そういう感情を無理せず自然に受け入れられる様になってくる、と言った方が正しいか。

 

個人差はあるとは思うけど、汚いものの中にもキレイなものが見えるようになってきたりというか、幸せは漂ってくる良い香りのようなものってことがなんとなくだけど分かってくる。

 

だからこそ「この世界の片隅に」の中にある日常が、とても美しくてとても愛しく思えてくる。

 

そして時代は違うけど、その日常感にこそ、感触のある、臭いのする現実感を、戦争の愚かさのはじっこを、リアルな感覚で感じ取れるんじゃないかなと思う。

 

以前NHKの番組で、「ハチ公」の話をやっていて、銅像の出来たいきさつも紹介されてた。

御主人を待ち続ける老犬ハチのために休憩室が作られたり、募金や支援の話もたくさん持ち上がり、ついには銅像が作られた。

でも結局戦争のために、そんな優しさや思いやりの詰まった小さな銅像さえも持って行って武器に変えたという…

 

確かに、時には横たわる死体さえ画面に映して、戦争の悲惨さ、むごたらしさを伝え、より真剣に考えてもらおうとするのもありなのかもしれない。

でもそれはただ起こった悲惨な現実の記録でしかなくて、国と国が争うとか、人々が殺しあうとか、そういう日常からかけ離れたことで戦争反対を訴えられるよりも、

 

「ちっぽけなハチ公像までもが溶かされるような異常な状況になるのが戦争」

 

の方が、自分としてはより近い感覚で説得力があるし、だからこそなんて愚かで馬鹿げたことだろうかと心底感じる。

 

「この世界の片隅に」の中で、玉音放送を聞いて怒り出すすずさんの姿が描かれている。

 

のんびり屋さんで、ほんわかしてるすずさんが、号泣して地面を叩いて泣き叫ぶ姿がとても胸に響いて見ていられないほどだ。

 

この時のすずさんが何を感じたのか、原作者のこうの史代さんや、監督片渕須直さんがすずさんの姿を通して何を伝えたかったのかは分からない。

でも個人的にはすごく理解できた。

 

終わってくれれば、勝ち負けなんて本当はどうでもいいというか、手の届かない所にあってどこか自分とは関係のない話のような気がするけれど、でも負けました、終わりましたとなれば、その結果は急に自分自身の感覚になって、じゃあ一体この戦争は何だったのか、何のために大切な人の命を奪われ、自分も腕をなくし、みんな辛く苦しい思いをしてきたのか。

何のために!? 何故!?どうして!?一体何をしてきたの!?なんなの!?

そういうどうにもならない理不尽さ、愚かで馬鹿げた戦争への悔しさ、やりきれなさ。

 

きっと当時そこかしこにあったであろう「世界の片隅」。
そして同時代に生きていたらきっと自分の家族もそんな所にいたであろう中心。
きっとそんな風に過ごしていただろう日常。

 

そういう戦時中の厳しい日常の中でも小さな幸せを感じて、どこか豊かさすら感じさせるすずさんの、その号泣する姿にこそ戦争の愚かさがこれでもかと詰まっている気がした。

そういうものをひしひしと感じたシーンだった。

ねんどろいど この世界の片隅に すずさん ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

 

繋がった日常

この作品を見てふと感じたのは、戦時下の「普通の人々」の日常の生活、生き方を、思った以上に偏った見方をしてたんじゃないかということ。

 

それはやっぱり、苦しいだろう、痛いだろう、恐いだろう、許せないだろう、とか言った様な刷り込まれてしまったイメージがあって、そういうネガティブなイメージ優先で当時の人達を見てしまってたんじゃないかなということ。

 

想像で軽々しいことを言うのは良くないかもしれないけれど、そんなネガティブなものに縛られずに、心豊かに、自分らしく、正しく生きた人も、きっとすごくたくさんいたに違いなく、それを思うととても狭い見方をしていたんじゃないかという気がして申し訳ない思いになった。

 

でもそういう感触のあるような、より自分に近くて現実感があるような戦争話は多分ウケない、とドラマや映画にもなりにくいのかもしれない。

で、ウケることを考慮して作られると、今度はどれも似たような印象になってしまって食傷気味…

それならば逆にと、現実の凄惨な映像を見せられても、上でも書いたように、記録は記録でしかなくて、あくまでも検証映像のようなものになってしまう。

そんな状態になってしまってるような気がする。

 

ただそれでも、今平和の中を生きている自分達には、手を変え品を変え戦争の愚かさを後々に伝えて行く義務があるんだと思う。

戦場で戦った人たちや亡くなった人たち、軍部や指揮した人たち、戦闘シーンなど「物語」としてウケやすいのならばそれもありとして。

 

同時に、だからこそただのなんでもない普通の人々の、ただのなんでもない日常の中にあった戦争を伝えることがすごく大切で、

その悲惨な日常が今の平和な日常に繋がっていると感じられることが、とても貴重なことなんじゃないかなと思う。

 

(出典:YouTube 劇場アニメこの世界の片隅に

 

表現する人たちの偉大さ

「手を変え品を変え」とは言っても、冒頭にも書いたようにドラマや実写映画には弱点になるものがある。

それは下の記事でもちらっと書いたけれど、「俳優」さんが演じるということ。

 

 

どうしてもその俳優さんの他の出演作品のこととか、新人さんだとしても撮影風景のこととかを想像してしまうと、今ひとつ感情移入できにくい気がする。

それを吹き飛ばすくらいのエネルギーがないと。

 

でもアニメの場合はその心配は少ないと思う。

もちろん力のある声優さんは色んな作品のキャラを演じてるので、一瞬かぶることがあるかもしれないけど、気になって見てられないってことはないんじゃないだろうか。

だからこそアニメにはすごい可能性が秘められていると思う。

 

ただ、可能性が秘められてるとは分かっていても、それを送り出す側の苦労はとんでもなく大変なものだろうなとも思う。

 

だって単純に戦争イコールドンパチとか、戦闘シーンの映像、それもかなりリアルなものとかをすぐ想像しちゃうし、どっちかというと最近はむしろそういうシーンをどれだけリアルに作れるか、みたいな方向にある気がするし。

「この世界の片隅に」は原作の存在とか、人気とかもあるとは言え、チャレンジングだったのは確かなんじゃないだろうか。

 

今のアニメは色んなタッチがあるものの、この作品はやっぱりちょっと独特ではあるし、すずさんのCVののんちゃんの声が、最初はちょっと違和感があったりした覚えもある。

まあ結局見終わってみると、それ以外ありえなかったなと思えるんだけど。

劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック

 

日本映画専門チャンネルで放送された際、放送後に片渕須直監督へのインタビューがあって、最後母を失ってすずさんの所にやってくる少女への、のんちゃんのセリフの部分の話があった。

 

映画を見ていた時、あの少女のくだりのショッキングな部分は、突然一体何が起こったのか分からなくて、ああそういうことなのかと分かるまでに少しの間頭が真っ白になった。

 

この服を引っ張る少女にすずさんはどういう風に接するんだろう、どんなことを言うんだろうと、一瞬色々想像したんだけど、あのすずさんのたった一言に「ああすげえ、ああなんかそうだ、そういう感じ」と強く印象に残ってた。

 

あの、たった一言だけどすごくあったかい一言は、片渕須直監督が「お母さんになってください。お母さんの気持ちで」とだけのんちゃんに伝えていたそうな。

そして出てきたあの言葉に監督も驚いたと話していて、確かにそれを聞いてこっちもびっくりした。

台本の上のセリフとかじゃなく、のんちゃん自身のセリフなのだ。

のん、呉へ。2泊3日の旅

 

とにかく「手を変え品を変え」実写だろうがアニメだろうが、生み出すことができる人、伝えることができる人たちはとても偉大で、尊敬できる人たちなのだ。

 

そしてこの作品「この世界の片隅に」はそういう偉大な人たちの色んなミラクルが重なってる素晴らしい作品だと思う。

優しさとか暖かさはもちろん、戦争の残酷さもあのタッチだからこそ逆に伝わると思うし。

 

タイトルとなった「この世界の片隅に…」のくだりのシーンや、そして何よりもやっぱり、最後に繰り広げられるほのぼのとした日常の光景がとても豊かで、とても愛しく思えた。

 

何事もなく続く日常が退屈なのは事実だと思うけど、とんでもないことが毎日起こればそれもまた日常になって退屈になるのかもしれない。

 

何事もない日常の中に幸せを見つけられる人こそ、最高に豊かな人生を送れる人なんだと思う。

ありがとう、うちを見つけてくれて 「この世界の片隅に」公式ファンブック

 

という訳で、今回は素晴らしき名作「この世界の片隅に」への感想とともに、色々感じたこと、思ったことなど、存分に綴ってみた。

長々と失礼… m(_ _;)m

 

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U-NEXTでは「この世界の片隅に」はドラマ版しかない模様。
ただ「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」がストックされてる♪

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本ページの情報は2021年5月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

 

 


物語の舞台である呉は、今回の西日本豪雨で大変な被害を受けておられる。

テレビドラマ見る様な状況じゃない方もたくさんいると思うので、このタイミングでのドラマ放送開始は制作側にとっても呉の方にとってもあまり好ましくないと思う…

映画をDVDなどでレンタルとなればさらに先の話になると思うけれど、心に余裕ができたら、見ていない方にはアニメはもちろん、ドラマも是非見てもらいたいなと思う。

 

コメント

  1. たら子 より:

    初コメ失礼します。
    ドラマは、今日は22時からですね。
    とても共感しました。

    • しびれ太 しびれ太 より:

      コメントありがとうございます♪
      アニメ本当に素晴らしいんですけど、ドラマはドラマでなかなかがんばってますよね ( ´∀`)

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