昨年の10月の終わりか11月のはじめころだったろうか、姉から「ヤズツとかカケ作ってよ」と言われた。
「は?ヤズツ?カケ?何それ蕎麦?」みたいな状態だったんだけど、どうやら弓道関係のミニチュアを作ってくれとのことだったので、「新しい課題」にちょっと興味をそそられて作ってみた。
今回はそのあたりの話。
ヤズツ→ヤヅツ→矢筒、カケ→かけ、ゆがけ(弓がけ)
そもそも「ヤズツ」とか「カケ」とかがなんなのか、自分を含め、一般人には分からないと思うんだけど、「ヤズツ」は「ヤヅツ」=「矢筒」、つまり弓道の矢を入れる筒ってことで、「カケ」というのはざっくり言うと弓をかける時の「手袋」のこと。
弓をかけるってことで「弓がけ」と呼んだりもするそう。
なんでもこの「かけ」はピンきり、と言ったら怒られそうだけど、安いものから高いものまで色々あるらしく、姉の持っているものも「はぁ!?」ってくらい高かった。
ちなみに「かけがえのないもの」というのはこの「かけ」から来てるそうで、自分だけのもの、「マイかけ」みたいな?弓道をする人にとってすごい大切なものなんだろうなと。
この「矢筒」や「かけ」はじめ、とにかく専門用語ばかりで一般人には「?」なものばかり。
個人的には作ることに興味があっただけなので、その辺りのことは突っ込んで研究したりはしていない。
矢筒・矢 → いけんじゃね? かけ → ・・・
んで、作ることに興味を持ったのは確かなんだけど、同時にこれはキビシそうだなとも感じた。
興味を持ったのは「矢筒」と「矢」の方で、これはなんとなくすぐにアイデアが色々浮かんで来てたので、プロトタイプ的なのは割とすぐにできるんじゃね?と思ってた。
一方で「かけ」は最初から相当難しそうと思った。
「矢筒」はしっかりと形があるものである一方、「かけ」は素材自体が柔らかいし、実物のかけを見てみるとほぼ1枚の革で作られてるので、これをミニチュアで再現しようとすると、道のりは果てしなく遠く思えた。
作るなら細部までこだわりたい一方、これはやっちゃダメ、みたいなその世界の「暗黙の了解」みたいなものがあるかも、というのをちょっと考えながら手探りで作ってた。
矢筒・矢の試作品と改良版をざっくりと
てな感じで前置きはそれくらいにして、実際手を動かした過程を書いてみようと思ったんだけど、案の定というか、狙い通りというか、矢筒と矢に関しては、色々試したとはいえそれほど苦労せずに試作品的なものは完成したので途中画像がない…
姉の持っている実物とネット上の情報などを参考に、とにかく最後まで一通り完成させてみたものが以下。
蓋の開け締めは実物同様、前の平結び部分を緩めたり締めたりして開け締めできる。
素材として、1枚目の画像の様に最初ロウビキ糸にしてみたんだけど、うまく滑らないし太さも太いので取り敢えず普通の糸に変更した。
一見するとこの「平結び」が難しそうなんだけど、ミニチュア籐椅子作成時にも取り入れたことがある結び方なので、割と簡単にできた。
逆に蓋の裏部分にあたる叶結びが難しくてイライラしたw
ちなみに大きさはフリースケールで、ミニチュアにして違和感のない程度にまとめた感じ。
最初に「これくらいの大きさで」みたいな要望もあって、これくらいのサイズで縮尺を同じにすると、かなり細くて細工的にも強度的にも問題ありそうだったので。
で、このプロトタイプで見直しが必要だった点、矢筒の太い部分や結びで使う紐、色柄の付け方や表面仕上げの方法、矢の長さや矢羽取り付け方法、色付けなどなど、色々改良して新たに作ってみたのが下の2つ(こっちもやっぱり作ってる過程の画像がない…)
一応主要な点などを書いてみると、矢筒は太さの違う紙包を組み合わせて、矢羽部分を内側で1mm、外側で2mm(蓋も)太くしてある。
これはプロトタイプの時に同じ内径だと矢が引っかかって出しづらかったので、見た目に影響出ない程度に太くしてみた結果。
とはいえまだ矢は出しづらいんだけども…
元は白い紙包で、プロトタイプの時は色塗りしたんだけど、筆塗りだとどうしてもムラが出てしまうので、改良版では紙を貼る形式にした。
かなり繊細な作業になったけど、割とうまく行ったので、最終的にパジコの水性防水材とコンパウンドでツヤ出しした。
矢の方は、ミニチュア籐椅子で使うアートフラワー用のワイヤーを利用して作成。
先端を1mm剥いて軽く尖らせて、後端は白のペイントマーカーを乗せた。
矢羽は、以前別用途でAmazonで買った天然フェザーの羽から小さく切り出し、瞬着で貼り付けてある。
元々は白い羽なので、黒い部分は後から色付けしたもの。
結びで使ってる糸は、ちょうど良い太さと毛羽立ちのないものを探して使用。
短いとどうしてもピンと上を向いてしまって、どうにか下に垂らす方法はないものかとビーズを使ってみたんだけど、それくらいの重みじゃ全然下向かなかった…
てな感じ。
かけ・ゆがけ(弓がけ)の作成方面
で、問題はこっち。
こちらも案の定、どころか、想像以上に大変だった「かけ(弓がけ)」の方について。
まず、「かけ」というのはこういうもので↓
こんな風にはめて↓
こんな感じにぐるぐると巻きつけるように装着するらしい↓
(この頃年賀状イラストも描いてたので、参考資料のLinda3(リンダキューブ)とか、田中達之氏の画集が写り込んでる。オヤツのブラックサンダーもw)
画像でどこまで分かるか分からないけど、ほぼ一枚の革から作られていて、親指周りにさらに別パーツが使われてる感じ。
まず困ったのが、どんな形なのかが全く分からず、かといって「かけ」自体を解体する訳にもいかず、さあどうしたものかと。
取り敢えず試してみたのが、形が似ているゴム手をそれっぽく切ってみて、どんな感じなのかを確かめてみる方法
ただ親指周辺が複雑すぎたり、考えてみれば、職人さんが作る時に革自体を伸ばしながら作っているだろうことを想像すると、伸ばしてない最初の状態の型がどんなものかまでは分からないし、ミニチュアで作った場合に同じ様に伸ばしながら作るなんてことは到底不可能だと思った。絶対切れるし。
で悩んだ挙げ句、実際に手にはめた状態のミニチュアかけを切り開いて型取りするのが一番早くね?と思って、急がば回れ?で手を作ってみた。
「ミニチュア籐椅子」で余ったワイヤーを利用して骨組みを作って↓
肉付けをして「手マネキン」作成↓
最終的に完成したミニチュアのゆがけが思ってたよりも小さくなってしまったんだけど、それはこの手自体がちょっと小さかったから。
この段階では果たしてこれでうまくいくのかと手探り状態だったので、手の大きさとかもザックリで、それほど重要視してなかった…
でも結果的にこの「手のマネキン?」を土台にして作っていくのが一番やりやすかった。
「手マネキン」に切り刻んだ和紙を貼り付けて型取りを試みたりと試行錯誤しつつ…↓
トライ・アンド・エラーの失敗の数々…↓
ようやくなんとか形になったのが、こんな型(三角の部分は持ち手)↓
もちろん型を作るたびに実際にファイクレザーで作ったので、失敗失敗失敗の残骸…↓
で、かけには親指部分に硬いパーツがついてる(和帽子?カケ帽子?)ので、これは別のパーツとして作成↓
これも形はもちろん、素材や硬さなど、何度も色々試してみた↓
取り付けはフェイクレザーで親指の抜けたゆがけのボディ部分を作って↓
その親指部分にかぶせる感じ↓
そしてさらに親指周りの補強?の革パーツ部分も作って、後からとりつけ↓
手首に巻く紐部分も色々試してみたんだけど、強度の面でこれは結果的にやっぱり革が良いということで豚皮(ピッグスエード)を細く切り出して作った。
画像はないんだけど、一応紐同士には接着剤などは使わずに、本物同様切れ込みを入れて互い違いに通す形で連結してある。
普通の人の視点と細ものマニアの視点?
今回の矢筒と矢、ゆがけのミニチュア作るにあたって、最初からなんとなく宙ぶらりんな感覚というか、はっきりしない部分があった。
それは、目的?というか用途?みたいなものが今ひとつピンと来なかったってことで、つまりは置き物として鑑賞して楽しむのか、キーホルダーとしてぶら下げたりするのか、みたいなこと。
また、キーホルダー的に使うなら、例えば車のルームミラーとかデスク上のライトとか、固定されたものにぶら下げるのか、はたまたそれこそ本物の矢筒にぶら下げて、年中持ち歩くのか、みたいな部分もあやふやな感じだった。
今にして思えば、この辺が一番考えなくちゃいけないとこだった気がする。
作りたいって気持ちばかり先行して、この辺をないがしろにしてた。
そもそもこれまで作って来たものが、置いて、見て楽しむもの、飾ってムフフと思えるものばかりだった訳で、キーホルダー的なものを作るというのとは最初からアプローチ方法とかも違ってるんだと思う。
キーホルダー的なものと言うことであれば、ある程度ハードな使い方を想定して、素材はもちろん、造形もある程度ザックリしたもので良いと思うから、細部まで作り込みたいタイプには向いてない気がする。
その辺りが宙ぶらりんなまま作ってたから、なんとなくキーホルダー的な使い方もできるように矢筒の蓋の輪っか部分を少しだけ大きくしたりとか、それでいて1/12とかのドールハウスサイズではなく、フリースケールで作ったりとか、終始中途半端な作り方になってしまった。
実際、姉の弓道仲間に意見をもらった際、「もう少し大きい方がいい」とか「飾っておくよりもいつも持ち歩きたい」みたいな意見が多かったようで、この辺りが普通の人の反応だと思う。
ミニチュアとか細かいものが大好物で、いつまでも眺めていたい、みたいなタイプとはそもそも視点が違う気がする。
逆に言えば、もう少し大きくしてキーホルダー的なものを、ということだとあまり魅力を感じないというか、作りたいって欲求が弱くなる部分もあったりするんだよな…
想像と創造の醍醐味?
という訳で、反省点は山盛りなんだけど、何よりも「新しい課題」に挑戦する、みたいな感覚はやっぱり楽しい。
ああしたらどうだろう、こうしたらどうだろうと試行錯誤してみたり、あれが使えるかもとか、あれ?これ使えんじゃね!?みたいに新しい見方をしてみたりとか、そういう時間もまたワクワクする。
そうい部分って何を作るかに関わらず、作ることが好きな人にとっての醍醐味なんじゃないかなと思ったりしたのであった。
今後キーホルダー的に大きいものを作るのか、小さいままでクオリティを高めるのかとか、その辺をどうするかはまだ未定なんだけど、取り敢えず今回もヤフオクに出品してみる。
最低5000円スタートにしたいところだけど、これは売れんだろうな…って気もするので、その辺も未定。
売れるか売れないか、いくらで売れるか、その辺の様子をみてまた考えてみようと思っている。
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